画像:シャツとジーンズの社会的価値は、歴史とともに変わってきた。

シャツとジーンズの社会的価値は、歴史とともに変わってきた。

ユナイテッドアローズ上級顧問 栗野宏文 インタビュー

この仕事をはじめて40年になりますが、未だに興味がつきない存在。それがシャツですね。いいシャツの条件は、素材と縫製がしっかりしていること。肌に直接触れるものだからこそ、生地がいいと肌触りが気持ちいいし、発色も良い。それに、いいシャツって、たたみやすいんです。個人的には、柔らかすぎないもの。襟にうすく芯地が入っていて形がきれいなシャツが好みですね。

ジーンズの何が、他のボトムスと違うか。それはやはり経年変化でしょう。洗って色が落ちるとか、シワができる、穴があく。ジーンズというアイテムは、歳を経ることをポジティブにとらえていますよね。自分の趣味でいうと、ジーンズは、たくさんの工夫をしていない、スタンダードなものが好みです。しいていえば「やや硬」が好きですね。

シャツとジーンズの社会的な価値は、歴史とともに変わってきました。シャツはもともと下着でしたが、それが、上着を羽織らずとも着ていいものへと変化してきました。クラーク・ゲーブルが映画の中で素肌にシャツを着て、当時は、そのセクシーさに世間が驚いたそうです。そうやって、シャツはその立場を徐々に上げていった。

いっぽうジーンズも、昔は、フォーマルな場にはそぐわないものでした。1985年、初めての海外出張でロンドンに行った時、ジーンズを履いていたために、ホテルに入れなかったことがありました。今日では考えられません。ジーンズは、作業着からシティウェアへと、社会的な立ち位置を上げたのですね。

ONでもOFFでも着られるシャツとジーンズが、HAND ROOMの良さだと思います。それを支えるのが、ものづくりの技術。ポケットの縫い方や立体的な裁断など、シャツ職人の技術を、レディメイドの中でとても真面目にやっている。縫製技術が試されるシャツとジーンズというのは、いちばん本質的だし、そこに絞っての展開がおもしろいと思います。トータルブランドではなく強みに絞ること。余剰なものをつくりださないということが、今の時代、地球環境的にも、経済効率的にも、とても大切なのではないかと思います。

栗野宏文

HIROFUMI KURINO

ユナイテッドアローズ上級顧問、クリエイティブアドバイザー。2004年にはロイヤル ・ カレッジ・オブ・アートより名誉研究員を授与。フリーランスのジャーナリストとしても活躍。